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POSTED/2022.02.19
ランチェスター戦略とは何か? 中小企業が「大企業に勝つ」方法
ランチェスター戦略とは何か? 中小企業が「大企業に勝つ」方法
事例や図解でフレームワーク解説
中小企業庁の統計によると、日本にある企業の数は約450万社。そのうち、99.7%の企業は大企業ではなく、中小企業です。ビジネスの世界では競争を避けて通ることはできませんが、リソースの限られた中小企業が大企業と正面から競い合うのは無謀というものでしょう。では中小企業は大企業には勝てないのでしょうか。それを考えるうえで役立つのが「ランチェスターの法則」なのです。
あなたの企業は、企業間の販売戦争を勝ち抜くための正しい戦略を取れていますか?
よくニュースなどで大手企業の戦略事例などが紹介されますが、中小企業がそのまま大手企業の事例を真似ても役立たないことが多いです。これは双方に合った戦い方が180度違うからです。そこで中小企業は、弱者の戦略である「ランチェスター戦略」を取り入れることが正しい戦略を取るためのポイントになります。
「ランチェスター戦略」は世界でもっとも広く利用されている戦略の1つで、弱者が強者に立ち向かうための戦略手法です。実際に多くの企業が実践し、競争を勝ち抜き売上を伸ばしてきました。
ランチェスターの法則とは
ランチェスターの法則とは、「戦闘力=兵力の質✕量」という法則です。戦いにおいて「戦闘力」はとても重要です。「戦闘力」を数学的に、定量的にアプローチすることをはじめて論じたのがイギリスの数学者でエンジニアでもあったランチェスターです。
ランチェスターの法則では、1位を強者、2位以下をすべて弱者と定義します。
戦力に勝る「強者」と戦力の劣る「弱者」にわけ、それぞれがどのように戦えば戦局を有利に運べるのかを考えるための戦略論。「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」という前提をもとにした「強者の戦略」と「弱者の戦略」に分けられる。もともとは第一次世界大戦での航空戦から生まれたが、現代では実践的なマーケティング理論として活用されています。
1対多の戦いにおいては、そもそも多数に対して破壊力を持つわけですから、わずかの差が非常に大きな戦果の差になります。
分かりやすい例を見てみましょう。ビッグ4と呼ばれるApple、Google、facebook、Amazonの4社でも、ある程度の追撃をしますが、シェアNo1を取っていこうという戦い方はほとんどせず特定分野でのNo1を死守する戦略が基本となっています(Googleならば検索など)。
よって、強者がとる戦略というのは、弱者が行って成功した戦術を真似し、それを数で圧倒し、膨大な資金によって広域に拡散(もしくは成功を買収する)させます。これは資金の有効的な投資が鍵となります。
人材の確保では、人材獲得サービスを使うことからヘッドハンティングへ。さらに人材獲得のためには企業買収など。とにかく火力(資金力)に物を言わせた攻勢と、代理店や宣伝などを利用して広域の覇権を取るような打ち手が基本です。
この法則から大企業のように兵力(資金や人員などのリソース)が優勢な場合は第二法則で戦うべきで、大企業よりも兵力が劣勢な中小企業は特定分野に特化し第一法則で局地戦を行ったほうが良いということになります。
ランチェスター戦略の要点3つ
ランチェスター戦略の要点は3つにまとめられる。
要点1.ナンバーワン主義
ランチェスター戦略の要はナンバーワンを目指すことだ。ここでいうナンバーワンとは、単なる1位ではない。2位以下を大きく引き離す1位である。
なぜ、突出した1位でなければ意味がないのだろうか。1位と2位の差がわずかだと、2位の立場は常に1位の立場を攻めてくるので、激しい競争が続く。
結果として1位の立場は、地位の確保のために収益や資源を大きく消耗し、安定は得られない。
しかし、1位と2位の差が大きいと、2位の立場は諦める。1位に戦いを挑むと自社のリソースを消耗するからだ。最終的に争いを避け、棲み分けを考えるようになる。
そして1位の立場は、収益性・安定性・成長性を維持できる。
要点2.強者と弱者の定義
多くの人が、弱者は強者に勝てないと直感的に感じる。しかし、そもそも弱者と強者をどのように判断しているのだろうか。
ランチェスター戦略では、弱者と強者を具体的に定義した。ビジネスにおいて市場シェア1位を強者、2位以下を弱者としている。
経営規模で決めるわけではない。商品別・地域別・販路別・顧客別に見極めたうえで判断する。
日本の自動車産業で考えてみよう。自動車市場でトヨタが1位、ホンダが2位以下だったとする。商品を二輪車に替えると、ホンダが1位で強者となるケースもあり得る。
なぜ、弱者と強者を分けるのだろうか。強者と弱者では戦い方が異なるからだ。自分の立ち位置を見極めないと戦法を間違える。
要点3.勝ち易きに勝つ
弱者が強者に勝とうとするとき、強者の真似をしてしまいがちだ。残念ながら、この戦法では勝てない。
シェアを大幅に占有する強者との競争は、弱者にとっては消耗戦にしかならないからだ。
また、強者にとって弱者の参入は、市場の拡大と需要の活性化につながる。そして、消費者が選ぶのは常に強者だ。弱者が強者と互角に戦うのは避けたほうがよい。
資源を消耗せずシェアを伸ばしていくなら、勝てる市場でナンバーワンを積み重ねるのが無難だ。
そのためには市場を細分化し、上位に引けを取らないエリアや、下位より圧倒的に有利なエリア、強者の死角になっているエリアなどを選んで、重点的に営業をかけていく。
そのほか、商品を見直して長所を磨いていくのも、勝ち易さにつながる。
ランチェスター戦略の基本原則2つ
ランチェスターは、戦い方ごとに戦闘力の方程式も導き出した。一騎打の近距離戦における方程式を第一法則、集団の広域戦における方程式を第二法則という。
第一法則
第一法則は、1対1の戦いに関する法則だ。一騎打戦、局地戦、接近戦など、狭い範囲で敵に近づいて戦う際に当てはまる。
方程式で表すと、戦闘力=質×量となる。
質とは、商品の品質や性能のほか、売り方、サポート、価格、提案力などを指す。量とは、営業担当者数や営業拠点数、商談頻度、サービス数、店舗面積などが該当する。
第一法則は、基本的に弱者がとるべき戦法だ。現代ならば、顧客に自ら近づいて直接販売を行い、売り切る戦略を指す。
第二法則
第二法則は近代的な戦い方に関する法則だ。
一人ひとりの敵を狙い撃ちするのではなく、集団が複数の敵を攻撃する状況を想定し、広域戦や確率戦、遠隔戦に当てはまる。
方程式で表すと、戦闘力=質×量2だ。
第二法則は、強者がとるべき戦法だ。広告で多数の顧客に働きかけたり、卸売の力をフル活用したり、指名買いを促すマーケティングを行ったりする。
弱者に付け入る隙を与えない戦略である。
ランチェスター戦略を使うときのポイント3つ
弱者が強者に勝ち、シェアを伸ばしていくためには、弱者の戦法である第一法則をとる。第一法則で戦うときのポイントを3つ解説していく。
ポイント1.一点集中主義
ランチェスターの第一法則・第二法則からは、量が勝敗を決めるとわかった。営業担当者数や営業拠点数で劣る弱者には勝ち目がないように思えるが、工夫をすれば量を増やせる。
強者でも、すべてをカバーできるわけではない。実際の営業では、リソースを分散せざるを得ないからだ。
県全体では強者だが、一部の市は手薄になりがちなケースはある。また、現役世代のファンは多いが、高齢者層は未着手といったこともある。
つまり、勝てそうな分野に狙いを定めて一点集中で営業をかけるとよい。全体で量が少なくても、一部の領域ではライバルに勝れる。
ちなみにゴールは、ナンバーワンになるまでだ。標準では2番手の√3倍(約1.7倍)、2社間競争や顧客内での単品シェアに関する競争なら3倍の差をつける。
ポイント2.差別化
弱者が強者に勝つには、一点集中主義だけでは足りない。戦闘力の要素である質で対抗することも必要だ。
質を磨いて差別化を実現すれば、強者を圧倒できる可能性が生じる。
差別化の視点は主に下記の通りだ。
・マーケット(事業領域や客層)の差別化
・製品・サービス(性能や売り方、用途、見た目、サポートなど)の差別化
・価格の差別化
・流通(販売経路)の差別化
・地域の差別化
・販促(広報や情報発信、ブランディングなど)の差別化
・営業(営業方法や顧客満足、問題解決など)の差別化
・理念の差別化
ポイント3.市場の細分化
ナンバーワンを目指すべきだが、2位以下の企業が競合他社のトップシェアを突然奪うことはできない。
したがって、細分化した市場でナンバーワンを積み重ね、最終的に強者の立場を目指す。具体的なプロセスは下記の通りだ。
- 市場を細分化する
- 勝ち易い市場を定めて集中的に営業を行う
- 細分化した市場で1位になる
- 強者の戦略で2位以下と差をつける
- 少し規模の大きい別市場でトップを目指す
小さな市場であってもナンバーワンになれば、収益性・安定性・成長性が増す。結果、余力を蓄えられるので、別市場のトップも目指せる。
市場を細分化したあと、ランチェスターならではのABC分析や地域戦略を実施し、厳密に勝ち易い対象を選定したうえで、効率的に営業することが必要になります。
ランチェスター戦略を経営/営業に取り入れて中小企業の勝ちを目指そう!